スキューバダイビングは、熱帯魚好きが高じて始めました。
父が始めた海水魚飼育で魚の美しさに目覚め、実際に海で生活している姿を見たくなり、沖縄へ旅行に行きました。
グラスボートで見る海中は非常に美しく、私を魅了しました。
もっと近くで彼らの姿を見たい、そんな思いがどんどん強くなり、スキューバダイビングを始めたのです。
そんな私には、一つの目標がありました。
それは、ナポレオンフィッシュと一緒に泳いでみたい、というものでした。
ナポレオンフィッシュというのは額から巨大なこぶが突き出ている、エメラルド色の大きな魚なのです。
こ私が小さい頃、テレビのドキュメンタリー番組で見たこの魚の大きさ、美しさは私の心を鷲づかみして離しませんでした。
ですから、スキューバダイビングをすると決めた際、自分の目標と決めていたのです。
いつの日か彼と一緒に海で泳ぎたい、と。
その機会は、思いがけない形で訪れました。
ライセンスを取得して二年目だったと思います。
南太平洋のトラック諸島へのダイビングツアーに参加したとき、昼食後にシュノーケリングをして遊んでいたのです。
その時、視界の隅で何か大きな魚が動くのを見つけました。
そちらに目を向けると、そこには体長1mほどのまだ若いナポレオンフィッシュが泳いでいたのです。
比較的深いとはいえ、浅瀬に来ることは非常に珍しいのです。
私はゆっくりと彼に近づきました。
1mほど横をゆっくりと併走しました。
あの時の感動は、今でも褪せることはありません。
10分ほどゆっくりと泳いだ後、彼は身をさんご礁の深くへと躍らせて去っていきました。
思わぬ形で、夢がかなってしまいましたが、未だに私は海へ潜り続けています。
もう一度、彼と泳ぐ為に。